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年金デモ参加者を「税金泥棒」と罵ったホリエモンこと堀江貴文氏、自身が経営に関与する会社に税金が投入されていた

 6月16日、東京都内で「年金返せ」デモが開催された。
 金融庁の審議会が提出した報告書の内容やそれについての政府の対応に抗議するデモで、主催者発表で約2000人が参加した。

 老後の生活の要であるにもかかわらず、これまでも様々な不正が発覚し、制度崩壊まで囁かれる年金。ただでさえ不安が募っているのに、今回さらに、年金だけでは2000万円足りない、というようなことを言われたら怒るのも当然だろう。





 切実な問題意識を持って行われたこの年金デモについて、堀江貴文さんが驚くべきツイートをした。

 


 "ほんとそんな時間あったら働いて納税しろや。税金泥棒め。"

 何を思ったのか、年金デモ参加者を「税金泥棒」と口汚く罵っている。
 当然のことながら批判が殺到した。
 デモ参加者を「税金泥棒」とはいったいどういうことなのか。

 意図的にSNS等で炎上を引き起こし注目を集め自己利益に結びつける手法を「炎上商法」と呼ぶことがある。今回の堀江氏のツイートもその類だから相手にするなという声も聞こえてくるが、それにしても、デモ参加者を「税金泥棒」というのはさすがに意味が分からない。

 憲法21条で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」が保障されているのだから、集団での示威行為であるデモ行進は人々の権利であり、「泥棒」などと言われる筋合いは全くない。
 
 堀江氏は後にこうツイートしている。

 

 
 "お前相変わらず文脈とか行間読めねーんだな。親切に教えてやるよ。このデモに参加してる奴の大半は実質的に納税してる額より給付されてる額の方が多いんだよ。それを税金泥棒って言ってんだよ。"

 デモ参加者の実質的に「納税している額」と実質的に「給付されている額」という分かりようもないことを根拠にして「税金泥棒」と言ったようだ。

 つまり何の根拠もないわけだ。
 とりあえず「税金泥棒」と言いたかったのかもしれないが、年金制度を憂い老後の生活に不安を募らせ立ち上がった人々に向ける言葉ではなない。


 さて、この堀江氏が立ち上げたインターステラテクノロジズ株式会社というベンチャー企業がある。

 堀江氏自らも取締役をつとめるこの会社は、国産民間小型ロケットの打ち上げに挑戦している。
 2019年5月4日、小型ロケットMOMO3号機は見事打ち上げに成功し、宇宙空間に到達した。
 

 日本のベンチャー企業が宇宙開発に参入し、ロケット打ち上げに成功するという何とも夢のある話だが、実はこの会社、税金が投入されている。

https://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/review2016/saishupdf/27004100METI.pdf
 これは2016(平成28)年度の経済産業省行政事業レビューシートだが、ここにインターステラテクノロジズの名前が出てくる。

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 研究開発のために1800万円が一般会計から拠出されているのだ。


 一般市民のことを「税金泥棒」と罵る堀江氏が経営に関与している会社が税金を直接受け取っている。


 なんとも呆れる話である。


 2017(平成29)年度にも一般会計から1800万円。
https://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/review2017/saishu/28003600METI.xlsx

 2015(平成27)年度は行政事業レビューシートに名前こそ出てこないが、その他の経産省の資料によるとやはり予算がついているようだ。
https://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/review2015/saisyu/26005900METI.xlsx

https://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000H30/181015_space_1st/space_1st_7-7.pdf

 どうやら事業が終了する2020(平成32、令和2)年度まで国から予算が出るということらしい。


 ロケット打ち上げに巨額の費用がかかるのは分かる。民間企業の宇宙開発への挑戦を政府が援助することも必要かもしれない。


 しかし、自分は税金の恩恵を多分に受けながらデモに参加した市民を「税金泥棒」と侮辱するのは厚顔無恥もいいところだ。

 このロケットは「ホリエモンロケット」とも呼ばれており、打ち上げるたびに堀江氏の宣伝になるということも忘れてはいけない。

 生存権に関わる年金制度について問題意識を持って意見を発する人々に対して不当な罵声を浴びせるなどもってのほかである。


 税金は、社会全体の利益を実現するために国家活動の源泉とするものだ。
 繰り返しになるが、デモ行進は憲法で保障された人々の権利であり、また、人々は平等に政治に参加する権利を持っている。
 納税額の多寡で政治に口出ししていいかどうかが決まるものではない。

 
 堀江氏もずいぶんと税金の世話になっているのだから、デモ参加者を「税金泥棒」と罵るのは不当で滑稽であることに自分自身で気づいて欲しいところだ